インドの想い出(その1)

仕事で一度だけインドに行ったことがある。インドは、ムンバイという大都市である。昔は、ボンベイと言っていた。映画「スラムドッグ$ミリオネア」の原作「ぼくと1ルピーの神様」の舞台だ。

行く前から、知人たちからは「インドは好き嫌いがはっきりする国。ハマる人と、二度と行きたくない人とにわかれる」と聞いていたが、私は果たしてどうだったか。

ムンバイに降り立った途端、「なんだ、この臭い…。」

ムンバイの旧市街地は、蒸し暑く、サウナの中にいるような、空気が身体中にまとわりつく感じだった。その空気感の中で「なにかが腐っているような」臭いが町中全体に漂っている。1週間ほど、ムンバイに滞在したが、期間中、その臭いに悩まされた。

旧市街地、と書いたのは、ムンバイには新しく開発された郊外のニュータウンがあり、そちらは空気も澄んでいて、臭いもなく、快適だった。旧市街地は、スモッグがひどく、太陽からの光も、光化学スモッグ的な射し込み方だったが、ニュータウンは日本のように青空が広がっていた。日本で慣れてしまっているせいか、やはり空気が澄んでいると安心する。

食事は、朝昼晩と三食がカレーだった。当然、日本のようなカレーライスではなく、インド料理店で出てくるようなナンとともに食べるカレーである。いろいろな粉のスパイスを油で混ぜ合わせたカレールーなので、当然、太る。

インドの人たちは、宗教上、左手は「不浄の手」なので、食事の際には、左手はテーブルの下に隠したまま食事をする。では、どうやってナンを切るのか。日本人はついつい両手を使ってナンをちぎって食べるが、インドの人たちは、右手だけでナンをちぎって食べている。確か、中指か薬指でナンを押さえ、親指と人差し指でねじってちぎっておられたように憶えている。最初見たときは、思わず感嘆の声をあげてしまった。実に器用である。

ただ、朝昼晩とカレーばかり食べていると、気持ちとして「もうお腹いっぱい」となってくるのは当然のことで、たまには和食が食べたくなる。

和食レストランもあまり見かけなかったし、この暑さと臭いの中で探すのも億劫だったので、ホテルのレストランで和食を頼んだ。

「あ、miso soup(ミソスープ)ってメニューにありますよ」「試しに一人分だけ注文してみるか」

「お、miso soupがきたきた。ではでは、どんなもんかな」

ずずず、、、、、、(沈黙)

「、、、ちょっと飲んでみて」「えっ」「いいから、飲んでみて」

ずずず、、、、、、「なんですかね、これ」「これ、なんの味?」「シェフに聞いてみましょう」

シェフに聞いたところ「あ、はい、白ワインを入れています」「えっ、白ワイン!?日本の味噌汁飲んだことある?」「ありません」

白ワインが入った味噌汁。味噌の味がしなくて、とても酸っぱかったのである。同行した仲間と回し飲みをして、全員がしかめっ面になった。まあ、これも良き想い出である。日本から持参したインスタントの味噌汁のほうが、当たり前だが、味噌汁の味がする。

さて、そのレストランでお会計である。同行者がテーブルでのチェック(お会計)で出したインドルピー紙幣を店員がブラックライトのようなものを当てている。へえ、念入りにチェックするんだなあ、と思ったのも束の間、「これ、偽札で使えません」

ええっ、偽札!

続く。

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